自社で10ヶ月以上かけて仕上げる、製品加工に適した木材。
Hacoaで使用される木材は、カナダメープルやアメリカン・ブラックチェリー、アメリカン・ウォルナットといった北米の広葉樹です。薄い板を加工したり、精密な加工を施したりすることの多いHacoa製品には、粘りがあって堅く仕上がりの美しい広葉樹が向いているからです。本社工房の敷地内には資材用のテントがあり、約3ヶ月分の製材が保管されています。
資材テントに保管されている木材は、どれも1年以上前に伐採されたものを3ヶ月ほど天日で干し、その後2週間かけてスチーム乾燥をかけ、さらに再度天日で3〜6ヶ月じっくりと完成させたものばかり。職人たちが丁寧に水分を抜いた木材の含水率は4〜7%以下で、一般的に家を建てる建材の含水率が14〜18%で「乾いている」状態であることに比べると、その品質基準の高さがうかがえます。木を扱う伝統工芸品に携わってきた職人にとって、14%の含水率は触っただけでも「濡れている」とわかるのだとか。こうして、丸太の状態から約1年もかけて、やっと製品加工に適した木材が完成するのです。
アイテムに合わせて木目を見極め、最適な加工で仕上げていく。
そうしたこだわりの木材は、加工するアイテムにあわせてサイズや木目の流れなどが見極められ、最適なものが選ばれます。加工には大きく8つの加工があり、木材の選定も“木取り”という大切な仕事のひとつ。木取りの後はアイテムによっても異なりますが、
・アイテムにあわせて厚みを整える“木割り”
・木材の歪みを0.2mm単位で削って平に調整していく“ねじ取り”
・木目の流れを読みながら板としての規格を整える“厚み削り”
・板を直角に仕上げて加工の精度・品質を高める“ソマ取り”
・指先に伝わる振動や音で判断しつつ丸鋸で製品の仕様にあわせて切断していく“成形切断”
・製品や木材ごとにプログラムを調節して図面通りの形に削っていく“NC加工”
・刃物の削り跡や引っかかりをヤスリで丁寧に磨きあげる“磨き”
といった工程が続きます。
アイテムに合わせて木目を見極め、最適な加工で仕上げていく。
こうした加工は一つひとつの木材が持つ特性や魅力を活かしながら、アイテムにとって一番良い状態を見極めつつ進められるため、職人たちの目利きと、理想をカタチにする技術が不可欠です。これは、Hacoaの母体である山口工芸に木地(漆塗りの土台となる木の器)づくりの知見があったからこそできること。Hacoaに憧れて全国から集まる若手の職人たちは、熟練の職人からその技術とノウハウを学び、自らの製品づくりへと生かしていきます。
日本各地で伝統技術の継承者不足が問題となっているなか、Hacoa本社のある鯖江も、決して人が集まりやすい立地とはいえません。それでも、ひとつのブランドを通じて、伝統技術が継承されていく。そうした在り方もHacoaの大きな魅力なのです。