極み見聞録

【岩佐 Vol.2】草履で培った“張り合わせ技術”を後世へ

岩佐のものづくりの真髄は「張り合わせ」技術にあります。

縫製では実現できない、美しいフォルムづくりを支えるこの技術は、創業時から続く草履づくりはもちろん、和装バッグやブラックフォーマルバッグと、そのすべての製造に息づいています。

  • レポート
  • ほんまもん
共有

手作業からなる、履き心地が良く丈夫な台

台職人、鼻緒職人、すげ職人。

品質の高い草履づくりは、どれ一つ欠けても足りません。職人の高い技術から生まれた素材と技術がそろうことではじめて、よく足になじみ長時間履いても疲れにくい高品質の草履が生まれます。

現在、岩佐で台づくりを担当しているのは、4人の職人。

台の芯材となるコルクは用途やデザインに応じて数段(数枚)かに分かれており、これら一枚ずつ素材を張り合わせていくのが台づくりの基本です。足をのせる『天』と呼ばれる部分には岩佐オリジナルのクッション材を採用、美しさだけでなく、歩きやすさの進化も常に考えて作り上げているのです。

間近で見る一連の作業は、まさに熟練の技そのもの。

職人一人ひとりが流れるような手さばきで台材を操り、自身の工程を積み重ねることで、機械では生み出せない足になじむ履き心地の良さと型崩れしにくい丈夫な台が仕上がります。

3人の職人が支える、岩佐の根幹 鼻緒づくり

台づくりの隣は、鼻緒づくりの工房。鼻緒は岩佐の商いの根幹であり、最も長く携わってきた作業で、現在は3人の職人がこの作業を担います。

上下別の鼻緒生地を縫い合わせ裏返し、その間に芯材を挿入、生地と芯のバランスと形を整えた後、親指と人差し指の間にはさむ先坪(さきつぼ)を縫い付けます。

経験にもとづく確かな手さばきで作業は黙々と進みますが、手仕事ゆえ一日に制作できる鼻緒は20個ほど。出来上がった鼻緒は台とともに“すげ”作業へ進み、やがて草履へと仕上がります。

張り合わせ技術が活かされたバッグづくり

岩佐の現在の中心事業であるフォーマルバッグ。このバッグの仕立てこそ、長年培ってきた張り合わせの技術が存分に活かされています。

バッグづくりに携わる人数は10人ほど。裁断された芯材と生地にのりを塗り、丁寧に張り合わせていく様子は、一般的なミシンで作るバッグとは全くの別物といえます。

このパーツ作りの段階から、手の感覚だけを頼りに生地を引っ張りながら張り合わせていきます。“引っ張り”がほんの少しでも弱ければ生地がたるみ、逆に少しでも強ければ生地が突っ張ってしまいます。仕上げた各パーツをバッグの形状へと張り合わせていく組み立ての工程も同じこと。たった1mm張り合わせ位置がずれるだけで仕上がりのバッグに歪みが生じ、正規品として扱えなくなる可能性があるといいます。

わずかな力の加減をコントロールする経験と、繊細な技術。

岩佐のフォーマルバッグに見える美しいフォルムと品格のある佇まいは、この技術無くしては実現できないのでしょう。

大切な技術を伝承するために。新たに乗り出した職人育成

創業時から岩佐とともにある張り合わせ技術ですが、今から15年程前、この技術の伝承が危ぶまれました。それまでは古くからともにあった外部の職人たちの技に支えられてきましたが、近い未来、職人たちの高齢化とそれに続く後継者不足が大きな問題となるのは明らかでした。

そこで岩佐はこれを機に、若手職人の育成に乗り出します。物作り経験のない若い人々を雇用し、ベテラン職人のもとで技術を学ばせる奉公制度を推し進めました。

そのメンバーが力を付け、実際に生産をスタートしたのが約10年前、取り組みが実ったのはここ数年といい、今では一人前になり社内工房に戻った職人が次世代の職人の教育に励んでいます。

大きな作業台に担当の職人が集まり一斉に張り合わせ作業に従事するさまは、岩佐の日常そのものです。モノづくりの現場で鳴り響く機械音はここにはなく、今日も人に手による“折ると“張る”の技術のみで次々と商品が生み出されています。

そんな中2017年には、これまでにないコンセプトによる新ブランドも誕生し、新たな岩佐の顔が育とうとしています。



次回の記事【岩佐VOL.03】ではこの新ブランド『SINCA』について、そして2018年秋に直営店として初出店した『岩佐 なんばスカイオ店』の魅力、オンリーワンの商品づくりをかなえるオーダーシステムなどについて詳しくご紹介します。

店舗詳細

5F

IWASA

営業時間
10:00~21:00
TEL
06-6626-9183